最初は娼婦の話。第二部はアルザスのユダヤ人、ニュシンゲンで、第三部がリュシアンですか、それから最後がヴォートラン。この四部がゆるやかな形でつながっていて、一つ一つを読んでもいいわけだし、通して読んでもいい。また他の作品、とくに『幻滅』なり『ゴリオ爺さん』との流れで見ていってもいいし(池内紀)……ええ、「人間喜劇」というのは複合体ですから、みんなそうです。でもやはりこの小説を支えているのはヴォートランで、これで三回目の登場ですから、あのすごい悪党だというイメージを読者はもう共有している。ヴォートランはどうな