出版社 グーテンベルグ21
出版日 2012-01-06
初冬から仲冬へ、近づく頃だった。江戸の名物でもある空っ風が、三日に一度は吹き荒れる。この時期の空っ風を、木枯しという。江戸の木枯しは、短時間に狂ったように吹くのであった。大江戸の人家の屋根を叩き、軒を煽って、路上を吹き抜ける。砂塵が舞い上がり、紙屑が競い合うように地上を滑ってゆく。看板が揺れて、木戸が忙しく開閉する。必ずどこからか、バタンバタンという音が聞えて来るものだった。…「木枯しの辻」冒頭。本巻には「賭けた浪人」「霜柱は笑う」「木枯しの辻」「湯治場の女」「凍った三日月」の5編を収めた。
朝日出版社
ブックマン社
三和書籍
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