断片的なものの社会学
路上のギター弾き、夜の仕事、元ヤクザ…人の語りを聞くということは、ある人生のなかに入っていくということ。社会学者が実際に出会った「解釈できない出来事」をめぐるエッセイ。
失言があると、たちまち炎上。政治家なら即、進退問題。いつからこんなに、窮屈な世の中になってしまったのでしょうか。しかも、問われることは枝葉末節、肝心なことほど、誰も何も言わないようです。結果として、美辞麗句が蔓延してはいるものの、どこまで信じていいものやら。この本は、そういう今の日本の「言葉事情」への疑問から誕生しました。心にもないきれい事、わかったかわからないかも、よくわからないようなカタカナ言葉、そんなものにうなずき合って暮らすのは、いい加減やめにしたいものです。やたらと言葉を短縮する物言いも、耳障りに感じます。身の丈に合った自分の言葉で、気兼ねなく思ったままを話したい。そういう願いを切にもつ昭和人間の偽らざる心境から、何気なく話される「現代語」から漏れ出した日本人の危うさをあぶり出します。
岸政彦(きし・まさひこ)1967年生まれ。社会学者。大阪市立大学大学院文学研究科単位取得退学。博士(文学)。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。研究テーマは沖縄、生活史。著書に『同化と他者化│戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版、2013年)、『街の人生』(勁草書房、2014年)、『ビニール傘』(新潮社、2017年)など。ブログ http://sociologbook.net/Twitter https://twitter.com/sociologbook