大学改革を問い直す
熾烈な「自由と競争」政策下でユニバーサル時代を迎え、大学は自らの手でその将来像を示さなければならない。長く政策立案に携わってきた高等教育研究の泰斗が、彷徨する大学の未来像を歴史から見通す。
熾烈な「自由と競争」政策下でユニバーサル時代を迎え、大学は自らの手でその将来像を示さなければならない。長く政策立案に携わってきた高等教育研究の泰斗が、彷徨する大学の未来像を歴史から見通す。
1936年神奈川県生まれ。一橋大学経済学部・東京大学教育学部卒業、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。名古屋大学教育学部助教授、東京大学教育学部教授、同学部長、国立大学財務・経営センター教授、同研究部長を経て東京大学名誉教授。専攻は教育社会学、高等教育論。
著書:「高等教育の日本的構造」(玉川大学出版部、1986)、「近代日本高等教育研究」(玉川大学出版部、1989)、「旧制専門学校論」(玉川大学出版部、1993)、「日本の教育システム」(東京大学出版会、1996)、「教育と近代化」(玉川大学出版部、1997)、「日本の高等教育システム」(東京大学出版会、2003)、「学歴の社会史」(平凡社ライブラリー、2005)、「教育と選抜の社会史」(ちくま学芸文庫、2006)、「大学改革の社会学」(玉川大学出版部、2006)、「試験の社会史」(東京大学出版会、1983/平凡社ライブラリー、2007/サントリー学芸賞受賞)、「国立大学・法人化の行方」(東信堂、2008)、「大学の誕生(上・下)」(中公新書、2009)、「高等教育の時代(上・下)」(中公叢書、2013)ほか多数。
まえがき
Ⅰ部 改革の流れを読む
第1章 大学教育にグローバル化を読む
1 ワールドシステムとしての大学
2 グローバル化の衝撃
3 問われる学部教育
4 学部名称とディシプリン
5 高等普通教育化する学部教育
6 大学院教育の新しい課題
7 学部教育の再構築を
8 生涯学習時代の学部教育
第2章 学生生活と教育の変容を読む
1 なぜいま大学教育改革なのか
2 エリート段階の教育と学生
3 キャンパスライフと就職難と
4 新制大学とマス化の開始
5 構造転換の試みと挫折
6 マス段階の大学改革
7 ユニバーサル段階への歩み
8 キャンパスライフの再構築へ
第3章 大学の多様化政策を読む
1 政策課題としての多様化
2 多様化問題の日本的特質
3 戦後の学制改革と設置基準
4 種別化構想の登場
5 個性化論への転換
6 個性化から機能別分化へ
7 大学分類と機能別分化
第4章 トロウのユニバーサル化論を読む
1 エリート・マス・ユニバーサル
2 アメリカとヨーロッパ
3 ヨーロッパ高等教育の危機
4 日本とアメリカ・モデル
5 戦後の学制改革
6 アメリカ・モデルへの再回帰
7 ユニバーサル化をはばむもの
8 トロウ理論の示唆するもの
Ⅱ部 改革を問い直す
第5章 質の保証装置を問う
1 質保障と大学設置基準
2 入学者選抜という装置
3 設置基準から評価システムへ
4 学力低下と入学者選抜
5 「教育過程」という装置
6 四つの装置の相互関係
7 大学教員の役割
第6章 入学者選抜を問う
1 入試から入学者選抜へ
2 日本の独自性
3 改革の試み
4 行きすぎた自由化
5 高等教育システムの改革
6 大学院・高校・企業
第7章 認証評価制度を問う
1 質保証と設置認可
2 認証評価制度の発足
3 明らかになった課題
4 評価基準と自己点検評価
5 専門分野別評価という課題
6 評価の文化と制度の構築へ
第8章 大学院を問う
1 混迷する大学院問題
2 整理の試み・形態と機能
3 認識と現実のギャップ
4 社会科学系の現実
5 社会科学系についての疑問
6 大学院制度の再構築を
第9章 建学の精神を問う
1 いまなぜ建学の精神か
2 大学の個性とは
3 校風・学風の時代
4 変化の兆候
5 マス化と個性の喪失
6 種別化から個性化へ
7 機能別分化と建学の精神
Ⅲ部 改革に歴史を考える
第10章 「全入」時代を考える
1 「全入」ということ
2 教育機会をめぐる政策の推移
3 ユニバーサル化への対応の遅れ
4 大学の教育危機
第11章 接続関係を考える
1 アメリカと日本の学力問題
2 高校教育の「自由化」
3 入学者選抜制度の転換
4 高等教育の自由化政策
5 日本とアメリカ再び
第12章 教養教育を考える
1 高等普通教育と旧制高校
2 中流階級の修養教育
3 職業主義批判と一般教育
4 一般教育は教養教育か
5 新しい高等普通教育を
第13章 秋入学を考える
1 秋入学か春入学か
2 秋主流の高等教育
3 秋・春の二本立てへ
4 春入学への転換と東京帝大
5 新しい問題提起
第14章 大学教員を考える
1 大学・大学院・学位
2 高等教育機関の教員
3 教員養成と大学院
4 戦前期教員の世界
5 戦後の変化
6 大学教員とは何か
第15章 ファンドレイジングを考える
1 ファンドレイジングと大学
2 政府による民間資金の吸い上げ
3 慶応義塾の苦闘
4 早稲田と立命館
5 富豪の学校づくり
6 歴史の教訓
第16章 教育研究組織を考える
1 教育と研究の基本組織
2 戦後の学制改革と講座・学科目制
3 新しい教育研究組織の模索
4 二つの大学審議会答申
5 柔軟で弾力的な組織編成へ
初出一覧