「学ぶ力」を取り戻す ―教育権から学習権へ―
2008年以降、日本の教育は政変の波に翻弄されてきた。そして東日本大震災、原発事故によって、これまでの価値観が問われている今、現場無視の教育政策を顧みつつ、進むべき道を探る。「教育と医学」連載をもとに書籍化。
2008年以降、日本の教育は政変の波に翻弄されてきた。そして東日本大震災、原発事故によって、これまでの価値観が問われている今、現場無視の教育政策を顧みつつ、進むべき道を探る。「教育と医学」連載をもとに書籍化。
京都造形芸術大学教授、映画評論家。
1952年福岡県生まれ。東京大学法学部卒業。75年文部省入省。文部科学省大臣官房審議官、文化庁文化部長などを経て、2006年文科省退職。「ゆとり教育」を推進するなど、「ミスター文部省」と呼ばれた。
近著に「百マス計算でバカになる」(光文社、2009年)、「2050年に向けて生き抜く力」(教育評論社、2009年)、「コンクリートから子どもたちへ」(共著、講談社、2010年)、「「官僚」がよくわかる本」(アスコム、2010年)、「「フクシマ以後」の生き方は若者に聞け」(主婦の友社、2012年)など。
はじめに
Ⅰ 教育の「ポスト近代」のはじまり
――二〇〇八年九月~〇九年十二月の動向をもとに
1 覚えていますか?「教育振興基本計画」
教育行政における計画の在り方/政治に振り回されないための「計画」/
政治劣化による無駄な混乱
2 教育における、法律の意味
教育基本法をひもとけば/「不当な支配」・今昔/議員や市長、政治の横やり
3 近代の終わりと、新たな教育観
「ゆとり教育」は生き続ける/「成長の限界」から四十年/「教育」論議にとどま
らない未来論を
4 変わる若者たち、変わらない大人たち
自分で考えるようになった若者たちを、助けよう
5 日本の教師はダメじゃない
教師ばかりがなぜ叩かれる/「教育」という発想から「学習」主体へ
Ⅱ 教育権ではなく、学習権なのだ――「新しい公共」と生涯学習
――二〇一〇年一~六月の動向をもとに
6 「教育の義務」から「学習する権利」へ
「教育を受ける義務」という誤解/「学習」の条件整備としての「高校授業料の無
償化」/教師を信頼して仕事をさせよう
7 教育と「多様化」「ゆとり」「利他」
高等教育機関の多様化とゆとり教育
8 議論に臆さない世代の誕生
小さな政府で大きな公共/若者に開かれた議論の手段/新しい教育システムで、
若者が学んできたこと
9 「新しい公共」のうねり
税金に頼らないで文化振興!/土曜授業とコミュニティ・スクール化
10 学習する権利は、すべての人のもの
修学支援と朝鮮学校/高等教育と適格者主義
11 学習の成果を数値化できるという勘違い
進学系高校の考え方が最も遅れている/小学校教科書の変貌
Ⅲ これからの社会構成と「学び」のありよう
――二〇一〇年七月~一一年六月の動向をもとに
12 「学び」をつくるのは国民自身だ
教化から自学へ、という必然性/「教育サービス」こそが「崇高な使命」なのだ/
自分たちの手による公共サービスを
13 専門教育の適正配置をどう実現するか
医療関係専門職養成には政策が必要
14 「総合的な学習」は開花している
現場を見なければ何も言えないのか?/「熟議」の実践は手弁当で/ひとりの学生
の発案が大事業を生んだ!
15 学力調査とはなんだろう
順位だけが大事なことか?/これからを生きる子どもたちに必要な力/偏差値秀才
からは歴史的使命感は生まれない?
16 教員とは、「やる気」が最重要な職種である
「教師の質」ってなんですか/公務員の士気を高めるのも行政トップの仕事だ
17 大学入試と少人数学級についての「神話」
いつまでもこのような大学入試ではいけない/「入試の公平」とはなんだろうか/
少人数学級が常によいとは限らない
Ⅳ 壊れそうな日本の「希望」
――二〇一一年七月~一二年三月の動向をもとに
18 絶望から未来を、自ら織り出す力
未来世代を殺しかねない「大人の所業」/本当に必要な力を子どもに/絶望から抜け
出す「行動民主主義」を/票を得たのを「全権委任」とあえて勘違いする暴論
19 学校不信・保護者不信・教員不信
教員に精神疾患が多い、というのは疑問/働き過ぎは、教員だけの話ではない/
学校不信が生む「モンスターペアレント」という概念/国が教員不信を率先した果て
20 未来を創造する世代を、大人が邪魔するという構図
いままでの価値観では復興はできない/生まれた時から「豊か」でなかった世代の活
躍/二〇〇二年学習指導要領世代の子どもたち
21 「教育基本条例」と教育委員会の政治的中立について
教育が政治家に従属していいはずがない/大阪「教育基本条例」に国はどう対応す
るのか/政治家は「極論」を言うより、足もとの弱者の救済を
22 新しい世代は、ぼんやりなんかしていない
ネットで、若い世代に呼びかけてみた/高校に行く理由を自分で考えなければ、高校
にいられない子どもたち/学びの保障が活きるのは、学ぶ理由があってこそ
23 いまのような政治家はもう要らない
政権交代には期待していたのだが・・・・・・もはや・・・・・・
24 民主党政権も、はじめは良かった
自民党政権末期の教育政策――「生きる力」より金を稼ぐ力だ/
民主党政権はかつて方向性をもっていた/新たな勢力の台頭と「教育基本条例」
おわりに――これからに向けて