戦争まで : 歴史を決めた交渉と日本の失敗
●受賞歴
紀伊國屋じんぶん大賞2017受賞
●内容紹介
かつて日本は、世界から「どちらを選ぶか」と三度、問われた。
より良き道を選べなかったのはなぜか。日本近現代史の最前線。
この講義の目的は、みなさんの現在の日々の生活においても、将来的に大人になって社会人になった後においても、
交渉事にぶちあたったとき、なにか、よりよき選択ができるように、相手方の主張、それに対する自らの主張を、
掛け値なしにやりとりできるように、究極の問題例を挙げつつ、シミュレーションしようとしたことにあります。(「講義の終わり」により)
読んでいて、一段階ずつがスリリングで、ダイナミックで、おもしろい。〔---〕
この書評を書きながら反省したのだが、結論に走ってはいけない。自分の意見に合うところだけつまみ食いしてはいけない。
史料を読んで、過程を辿って、その中から今後に役立つものを誠実に抽出する。これはそのよい練習になる本である。
――池澤夏樹さん(2016年9月4日掲載、毎日新聞書評)
日本の未来を真剣に考えるすべての人にとっての必読書だ。
――佐藤優さん(2016年9月12日号「AERA」書評)
著者の知識に接する中高生たちの問題意識の鋭さは頼もしい。
「普遍的な理念の具体化」が欠けていた時代だったという結論を読者もまた共有する。
――保阪正康さん(2016年10月2日掲載、朝日新聞書評)
ページを捲るたびに、自分の視野の狭さに気づき、自分ならどう判断していただろうかと考えさせられた。〔---〕
単純化した物語に回収することはいくらでも可能であろうところを、事実にもとづいて、より豊かな物語として
理解していくプロセスを楽しませてくれる。
――開沼博さん(2016年9月25日号「サンデー毎日」書評)
当時は「これしかない」という空気が作られ、現在も「日本は戦争に追い込まれた」といういいかたがされる。
しかし、加藤が中高生たちと史料を読んでいくと、別の様相が見えてくる。
――永江朗さん(2016年9月9日号「週刊朝日」書評)
キーワードは「選択」で問題の「本質」が選択肢に反映されているか否かを、国外・国内の情況や対抗関係をみすえ解読する。〔---〕
「戦争まで」の動きがたんねんにたどられ、中高生ならずとも、多くの知見を得る。
――成田龍一氏(2016年9月25日、日本経済新聞書評)
著者の采配に従い史料を読む受講生の疑似体験的ワクワク感も感じ取れるが、その史料読解作法は
頭の中に立体的に現実を再現するというもの。戦争にしろ同盟交渉にしろ、日本外交から「理念」という言葉が
消えていることにも気付かされた。
――原田敬一氏(時事通信書評)
加藤陽子(かとう・ようこ)
1960年、埼玉県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。1989年、東京大学大学院博士課程修了。山梨大学助教授、スタンフォード大学フーバー研究所訪問研究員などを経て現職。専攻は日本近現代史。
2010年に『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)で小林秀雄賞受賞。
著書に『模索する1930年代』『徴兵制と近代日本』『戦争の日本近現代史』『戦争の論理』『戦争を読む』『満州事変から日中戦争へ』『NHK さかのぼり日本史(2)昭和 とめられなかった戦争』『昭和天皇と戦争の世紀』などがある。
1章 国家が歴史を書くとき、歴史が生まれるとき
2章 「選択」するとき、そこで何が起きているのか ――リットン報告書を読む
3章 軍事同盟とはなにか ――20日間で結ばれた日独伊三国軍事同盟
4章 日本人が戦争を選んだのはなぜか ――日米交渉から見える痕跡と厚み
講義のおわりに 敗戦と憲法